1.研究テーマ 
「便利さ」の裏側にある加害構造を、映像で可視化する
テーマはE-waste(電子廃棄物)。スマートフォンやPCなしでは成り立たない現代の生活。その「便利さ」の裏で、世界では何が起きているのか。「E-waste」という言葉すら知らない人が多い現状に着目し、それを認知させ、見た人が自分ごととして捉え、加害意識を持つきっかけをつくることを目指す。最新デバイスの美しさと、捨てられた後の醜さ。その乖離を映像で提示し、消費者である私たち自身が、この問題の当事者であることに気づかせる。
2.背景・問題意識 
年6,200万トン、リサイクル率わずか22.3%という現実
毎年6,200万トン以上の電子ごみが世界で排出され、その量は2010年比で82%も増加している。にもかかわらず、適切に回収・リサイクルされるのはわずか22.3%にすぎない。残りの多くは不適切に処理され、鉛や水銀といった有害物質を環境に排出している。しかし最も深刻なのは、「E-waste」という言葉自体を知らない人が大多数を占めるという、認知の欠如である。問題が存在することすら知られていないために、議論も対策も前に進まない。この「無関心」こそが、背景にある最大の課題だと考えた。
3.問い
認知させ、見た人に「加害意識」を持たせるには
E-wasteという言葉すら知らない人が多い中で、それを認知させ、見た人に「加害意識」を持たせるにはどうすればよいか。これが本研究の核となる問いである。アプローチは二段階で考えた。まず「知る」こと。E-wasteが存在すること自体を、データと映像で事実として突きつける。次に「自分ごと」にすること。先進国に住む消費者としての自分が、実はこの問題に加担しているという構造を提示する。同情や憐れみではなく、当事者としての自覚を促すことを狙う。
4.表現方法
CG映像とミニマルなUIで「見えない現実」を可視化する
制作するのは、データビジュアライゼーションとモーショングラフィックスを組み合わせた映像作品である。表現は三つの層で構成する。背景のCG映像でE-wasteの世界観と空気感をつくり、手前のシンプルなUI・グラフ・文字で事実とデータを淡々と提示する。美しいスマートフォンが、捨てられた瞬間に電子ごみとなり、やがて資源と毒性を含んだ廃棄物へと変わっていく流れを描く。情報を詰め込みすぎず、映像そのものの変化に語らせることで、かっこよさと学びを両立させる。
5.今後の展開
映像を入口に、実写やインスタレーションで「その先」へ深める
本作の映像は、E-wasteを知らない人に向けた「入口」として位置づけている。今後は、映像で興味を持った人がより深く知れるよう、実写を用いたWEB補足資料を組み合わせ、抽象化されたCG映像と、解体現場の生々しい現実とを往復できる構造へ発展させたい。さらに、廃棄物素材と映像を組み合わせた空間インスタレーションとしての展示も視野に入れる。「捨てる側」と「拾う側」を同時に見せることで、鑑賞者が自らの加害性に気づく体験へと育てていきたい。
企画・制作
瀧川暉平

使用ソフト・ツール
Cinema 4D / After Effects / Higgsfield / Premiere Pro

参考文献・参考作品
Global E-waste Monitor 2024(ITU / UNITAR)/ 『E-Wasteland』(2012) dir. David Fedele / InfoTexture – Vol.01 Minor Metals Situation
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