1.研究テーマ
海洋プラスチック問題を可視化し、自分事として認識させる試み
海洋プラスチック問題は世界的な環境問題として知られているが、日常生活の中でその影響を実感する機会は少ない。そのため、多くの人にとって身近な問題として捉えにくい現状がある。本研究では、AR技術を活用したインスタレーションを制作し、魚の体内に蓄積したマイクロプラスチックを可視化することで、目に見えない問題を体験として伝えることを目指した。魚の模型にスマートフォンをかざすことで内部の様子が表示される仕組みとし、鑑賞者が作品を体験しながら海洋プラスチック問題への関心を深め、自分自身にも関わる問題として考えるきっかけを与えることを目的とした。
2.背景・問題意識
海洋プラスチック問題は、日常では見えにくい
近年、海には多くのプラスチックごみが流れ込み、それらは波や紫外線の影響で細かく砕かれ、マイクロプラスチックとなって海を漂っている。魚はそれを餌と間違えて食べてしまうことがあり、その魚を私たちが口にする可能性もある。しかし、マイクロプラスチックは普段の生活では目に見えないため、環境問題として知っていても、自分との関わりを実感する機会は少ない。そのため、本研究では見えない問題をARによって可視化し、体験を通して海洋プラスチック問題を身近に感じてもらうことを目指した。
3.問い
海洋生物の内部を見る体験によって人は問題意識を持つのか
本研究では、魚の内部をARによって可視化する体験が、海洋プラスチック問題への関心や理解を深めるきっかけとなるのかを検証することを目的とした。環境問題は映像や文章で情報を伝える機会が多い一方で、自分事として捉えられず、関心を持ち続けることが難しいという課題がある。そこで、魚の内部を自ら見るという体験を通して、鑑賞者の印象に残り、海洋プラスチック問題を身近な問題として考えるきっかけを与えられるのではないかという問いを設定した。
4.表現方法
魚の模型をスマホでスキャンすると内部が見えるAR体験
3Dプリントした魚の模型を展示し、スマートフォンでスキャンすると魚の体内が表示されるARインスタレーションを制作した。AR上では、魚の体内に蓄積したマイクロプラスチックを可視化し、魚が餌と間違えて取り込んでしまう現状を表現している。また、展示は魚の模型のみというシンプルな構成とし、照明によって静かな海をイメージした空間を演出した。鑑賞者が作品の世界観に没入しながら体験することで、海洋プラスチック問題を身近な問題として捉え、環境問題への関心や意識を高めるきっかけとなることを目指した。
5.今後の展開
より多様な生物や展示への展開
今後は、魚だけでなくウミガメや海鳥など、海洋プラスチックの影響を受けるさまざまな海洋生物へ対象を広げ、それぞれの生態や特徴に応じたAR表現を検討していきたい。また、ARだけでなく音響や映像演出を組み合わせることで、より没入感のある体験型インスタレーションへ発展させたいと考えている。さらに、展示後にはアンケートを実施し、作品を体験する前後で海洋プラスチック問題に対する意識や理解にどのような変化が生まれたのかを調査・分析し、表現手法の有効性についても検証していきたい。
企画・制作
風間日織
風間日織
使用ソフト・ツール
Unity 、Illustrator、AfterEffect、Blender
協力
渡辺琉太、清水蒔咲、佐藤瑠衣、松尾快兎