1.研究テーマ 
主観的な色の曖昧さを、伝統色を通して可視化する
伝統色とは、古来より日本人が自然や日常生活の中から見出し、それぞれに名前を与えてきた色彩を指す。人々は色を当時の価値観や思いを込め語り継いできたため、日本独自の文化を色濃く反映する。数値で簡単に管理できる現代だからこそ、客観的ではなく主観的な色の在り方に魅力を感じた。以上を踏まえ、色の曖昧さを知り、ひとりひとりが想像する体験を促す動画制作を試みる。今回は伝統色を5つ取り上げ、色名が与えられた景色や扱われ方に着目し、空気感を重視して可視化する。
2.背景・問題意識 
記憶と色が結びつく際に生じる影響
きっかけは色彩検定の勉強の過程で発見した、伝統色のイメージと実際に規定された色の違いである。色は日常にありふれているにも関わらず、改めて色そのものについて考える機会は少ない。私たちは普段の生活で、どの程度お互いが想定する色彩を理解しているのか気になり、色という概念をテーマに据えた。普段の生活で目にする色は、殆どが環境光や色覚特性、心理状況など、様々な要素に影響されている。物体の色は固定されていたとしても、私たちが認識する過程によって色は認識された分だけ変化しているのではないか。
3.問い
人はどのように色を認識/共有しているのか
知っている色名を見た時、人は最初に何を思い浮かべるのだろうか。知らない色名を見た時、人は何を出発点として色を想像するのだろうか。そして同じ色名を見た時、思い浮かんだ色はどの程度合致しているのだろうか。この問いに対し、私たちは色を経験や印象に置き換えているという仮説を立てて研究を進めた。違いの改善を促す目的ではなく、違いがあることを理解する意図で研究を行った。違いを知り、理解を深めることで、自分と違う価値観との向き合い方を発見できれば、私生活を送る上でも役立つ考え方の気づきに繋がるかもしれない。
4.表現方法
映像を通して過去の共通体験に触れる
事前リサーチで発見した、対象を見た経験が共通しない、又は歴史や由来に意外な発見がある色名を5つ取り上げてモーショングラフィックスを制作した。非物質的要素の可視化を重視し、テーマに沿わせ物体の色を固定せずに制作を行った。実際に取り上げている色名が生まれた景色や、当時の扱われ方が説明せずに感じ取れる表現を目指す。空間として表現することで、デジタル上でも昔の共通体験を疑似的に可能にし、価値観に触れる行為を実現させる。
5.今後の展開
色を見るという行為の意識化、自分の認知の癖に気付く
色という主観的な概念について改めて考える機会をつくることで、色を見る行為の意識化と、自分の認知の癖に気付くこと、また名前が与えられた当時の価値観を体験するという目標を掲げて制作を行った。今後は動画を視聴した人に改めてアンケートを行い、目標が達成できているかの確認と、色名を理解した前後でどのような変化があるのか情報収集を行うのも面白いかもしれない。また、事前リサーチで得た共通体験の有無が色を想像する過程に影響するという仮説ともう一度すり合わせを行い、自分なりの意見をまとめる。
企画・制作
山﨑 遥乃葉

使用ソフト・ツール
Adobe After Effects

参考文献・参考作品
JIS慣用色名 物体色の色名
JISZ8102:2001 物体色の色名
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