1.研究テーマ
マンホールを地域を物語るアートとして再認識する
本研究は、普段は道路の一部として見過ごされがちなマンホールに着目したものである。マンホールは一般的に、地下に埋設された下水道管や通信ケーブルの点検・修理・清掃などを行うための人の出入り口としての役割を担っている。私は、マンホールの蓋に施された精巧で個性豊かなデザインに魅了され、その一つひとつに込められた意味や地域性を多くの人に知ってもらいたいと考えた。本研究では、マンホールの蓋を円形のキャンバスとして捉え、そこに描かれたデザインを「アート」として再認識するための新たな視点や表現方法を模索する。
2.背景・問題意識
多様なマンホールデザインとその魅力
マンホールは下水道施設を支える重要なインフラであると同時に、近年では地域の魅力を発信する観光資源としても注目されている。各地の特色を生かしたデザインマンホールが設置され、一部は下水道広報プラットホーム(GKP)の「マンホールカード」として展開されるなど、観光客を呼び込む役割も果たしている。しかし、その価値が広がる一方で、私自身を含め、マンホールのデザインやそこに込められた意味を認識している人は少ない。この現状に着目し、身近な存在であるマンホールを改めて見つめ直す必要があると考えた。
3.問い
マンホールデザインの役割とその在り方
マンホールを観光資源という視点で捉えたとき、そのデザインに新たなアプローチを加えることで、多くの人に関心を持ってもらえるのではないかと考えた。単にデザインを鑑賞するだけでなく、その成り立ちや制作過程を順を追って伝えることで、より印象に残り、理解も深まると考える。本制作では、普段は「道路の蓋」として見過ごされているマンホールを、一つのアートとして再発見する機会を創出し、その魅力や価値への認知を広げることを目的とする。
4.表現方法
マンホールが描かれていくモーショングラフィックス作品
1つのマンホールを題材に、枠のみの状態からイラストが徐々に完成していくアニメーションを制作した。デザイン完成後には、その概要と設置地域を表示する構成とした。Illustratorで写真をもとにマンホールを忠実にトレースし、完成したイラスト素材をAfter Effectsでアニメーション化した。規則的な動きとデザインごとの個性を生かした動きのメリハリを意識し、特に4つ目の山形県の流域下水道のマンホールデザインでは、舟の海に揺られるような自然な動きを表現することに最も苦労した。
5.今後の展開
デザインの地域性、インフラ的役割の表現
今回は4種類のマンホールデザインをピックアップした。今後さらにデザインが増えていけば、マンホールのデザインを知ってもらえる幅も増えるが、この制作では、見た人にマンホールデザインの存在の認知と、それぞれが地域の歴史や文化などの特色を映したアートなのだと知るきっかけになれば、映像作品としての意味をなすと考える。そこからさらに、各地の目的である下水道への理解の深まりを促進するようなインフラ的役割も果たす映像が今回の制作の終着点なのかもしれない。レイアウトもどんどんこだわっていきたい部分である。
企画・制作
手塚晟海
手塚晟海
使用ソフト・ツール
Adobe Illustrator / Adobe After Effects